★運動療法
パニック障害の治療法として推奨したいのが、この運動療法です。
パニック障害患者さんは、えてして運動する事を嫌う傾向がありますが、やはり運動は健康の基本ですので、すすんで身体を動かすようにしましょう。
また、運動は肉体面で身体をほぐしてリラックスさせるだけではなく、精神面にも非常に優れた効果を発揮します。
実際に「運動を始めてからパニック障害が改善された」という人は非常に大勢おられます。
家から遠くなると不安になる方も多いと思うので、まずは近所の散歩などの軽いものからはじめてみてはいかがでしょう。
もちろん楽しんでやれれば、何かサークルやスポーツクラブで鍛えるのもいい方法かと思います。
季節の花を眺めたり、森林浴を楽しみつつ身体を動かすと、心身共にリフレッシュできます。
特におすすめするのが、ウォーキングやジョギングなど一定のリズムで動く運動です。
なぜならリズム運動をすると、脳内にセロトニンという「やる気」を司る神経伝達物質が分泌されやすくなるからです。
パニック障害は、もともとセロトニンなどの神経伝達物質の量や、バランスに異常があるために発症するとも言われているため、セロトニンの分泌を促進するリズム運動で効果が得られるということですね。
その他には筋トレをして筋肉をつける、というのも有効なようです。
理論はよくわかっていませんが、筋トレをしてパニック障害が改善された、という人もいますので、筋肉をつけることがパニック障害の改善に何らかの役つのではないか、と言われています。
実際になかまの会の会員さんで、毎日のウォーキングで心臓を鍛えパニック障害を治した人がいます。
その方は副作用が強くて薬が飲めず苦しんでいましたが、ウォーキングにより心拍数が上がる状態に身体を慣らすことでパニック発作の恐怖を緩和されることに成功したようです。
★栄養療法
糖分やカフェインはビタミンやミネラルを消耗するのだそうです。
もちろんアルコールやタバコは言うにおよびません。
ビタミンやミネラルが不足すると脳内の代謝も不調になります。
各種栄養素の不足や、糖分・カフェインなどの過剰摂取による自律神経の乱れなどが、パニック障害の原因のひとつになっているとも考えられます。
間食に何か食べたいというときは、成分無調整の豆乳などのたんぱく質、煮干、ナッツ、胚芽米や雑穀を使った小さいおにぎりなどが良いですね。
また、たんぱく質不足はエネルギー不足となるので、積極的に摂るようにしましょう。
お腹がすいてくると、冷や汗や動悸、セカセカした気分など何か不快な感覚が起こりませんか?
そういう場合は、そのような症状が出る前(食後2~3時間したら)に、先手を打って、先にご紹介したような甘くない間食を摂る習慣を持ちましょう。
また普段から穀類・野菜・魚・肉・豆類・海藻類を出来るだけ、さまざまにバランスよく取り入れて食べてくださいね。
できれば胚芽米や雑穀、黒砂糖やさとうきび糖のように精製されすぎない食品を使用しましょう。
栄養療法では、パニック障害についてビタミンB、鉄分、たんぱく質、亜鉛の不足を大きな主因と考えています。
先でも述べましたように糖分カフェインの過剰摂取もパニック障害を悪化させる要因になりますので、気をつけてくださいね。
なかまの会で開催したセミナーの栄養士さんも、パニック障害の緩和にはバナナやきな粉が最良と言ってました。
★腹式呼吸法
腹式呼吸は発作を誘発する緊張を緩和する効果があります。
1. まずは四肢、首、肩、胸、背中の力を抜きます。そのまま軽く息を吸って、自然に息を吐きます。
2. 自然に息が出たら、お腹をゆっくりとへこませるようにして、口から息を吐きます。
3. 息を吐ききったかな? と思ったところで、さらにハーッと息を出すようにして、十分に吐ききって下さい。
4. 吸うときは、お腹の力を抜きます。すると自然に、息がお腹に入ってきます。
(鼻からお臍を通り、下腹部まで入ってゆくようにイメージして下さい。 息は鼻から吸い、口から吐くのが基本になります。)
5. 十分に吸ったら、数秒間保ちます。その後、力をよく抜いて自然に息を出し、2.に戻ります。
上記の要領でお腹を十分に使い、胸郭を意識せずに呼吸するのが腹式呼吸です。
★ブリーフ・リラクセーション
ブリーフ・リラクセーションとは1977年アメリカのハーバード大学医療センター準教授だったベンソンが提案した筋肉をリラックスさせることで緊張や不安を減少させ、精神を安定させる療法です。
パニック発作を誘発する ストレスや緊張の緩和、高血圧の解消にも有効です。
場所は、自宅など一番自分が落ち着く環境でするのがベスト。
ベルト、ネクタイ、メガネや腕時計、上着など、からだを締めつけるものは外します。靴や靴下もつけません。
空腹や満腹の状態は避けます。トイレも済ませておきます。極端な暑さ、寒さは避けます。
要するに私たちが眠り につくときのような状態がベストなのですが、すべて整っていないとできないということではないので、あまり神経質にならないこと。
まずイスに腰掛けて首筋、背筋をまっすぐ伸ばす。軽く目をつぶり、両腕を脇にたらす。
両足は投げ出すように前方へ伸ばす。
その後、両こぶしを握って、全身に力を入れ、数秒間緊張する。
その後、一気にパッと力を抜くと、全身にだらんとした脱力感が得られる。これがリラクセーションです。
充分にリラックスすると、手足の先端がふくれる感じやしびれる感じが現れる。
温かく感じることもある。歯は噛みしめず、頭のなかは空っぽにしておく。
はじめのうちは雑念が浮かんでくるが気にせずにやりすごす。
とくに腹式呼吸などを心がける必要はなく、自然な鼻呼吸でよい。
息を吐き終えるたびに「ひとーつ」あるいは「ふーっ」と心のなかで繰り返す。
このとき、深いリラクセーションが得られたかどうかは気にしないこと。
受け身の態度を保ち続け、リラクセーションが自然に得られるのを待つという心構えが大切です。
以上を1回につき約5分続ける。
終わったら、意識を現実の生活に戻すために「取消動作」を必ず行いましょう。
目をつぶったまま、こぶしを握り、両腕を胸に引き寄せてぎゅっと曲げる。
そして勢いよく前に伸ばしながら手を開く。これを3回繰り返し、深呼吸を1回行って目を開ける。
以前なかまの会主催のセミナーでも、健康心理士を講師に招いてブリーフ・リラクセーションの体験をしていただきましたが、多数の方から「楽になった」との声が聞かれました。
★広場恐怖治療法
パニック障害の症状の一つに広場恐怖があります。
広場恐怖とは、自分の行動が奪われるような場所、電車や飛行機などの乗り物に乗れなくなり一人では外出もできなくなる症状がおこります。
パニック障害に続いて発症するケースが多く見られます。
この広場恐怖は、その場所に怖さを感じるのではなく、万が一に起こる事故から逃げられなくなるとか助けを求められないのではという予感から体に異常をきたします。
例えば、長時間拘束されることになる歯科治療や美容院などです。
また特急電車や飛行機など、すぐに降りれない状況にも恐怖を感じ、発作などが起こってしまうのです。
症状をわかりやすく説明するために乗物恐怖や閉所恐怖などと呼ばれることもあります。
これは脳から伝わっているもので、脳の扁桃体と呼ばれる思考の働きとは関係なく情動刺激を不安と判断してしまい
身体が反応を起こしてしまいます。
広場恐怖になった場合は、SSRIや抗不安薬などの薬物を使用した治療法から始めます。
パニック障害の詳しいお薬情報は「パニック障害と薬」へ
パニック発作や予期不安による悪寒などが軽くなると、一人でも外出できるようになります。
人ごみの中にも普通に入っていくことができます。行動療法も併用して行われます。
今まで避けていた場所にあえて行かせる方法も試されます。
少しずつ目的地に近づいていき、最終的には目的地にたどりつかせる方法です。
例えば電車に乗るのに悪寒を覚えるようであれば、一つの駅から次の駅までを目指します。
そして乗れる距離を伸ばしていきます。こうした治療法により、病気から解消されていきます。
また良くなった方からのアドバイスとして・・
行動療法中に不安や緊張に襲われた際、その緊張と戦おうとするのではなく、「いつも通り緊張してきたなぁ。自分はパニック障害だから緊張してあたりまえ、不安になってあたりまえ」という気持ちで、あるがままを受け入れた方が楽にやり過ごせるようです。
・広場恐怖にかかった時の周りの対応
一人では家からも出られなくなるために付き添いがないと病院を受診できない症状の人もいます。
周りの人も病気ということを自覚し心のツエや支えとなりましょう。症状が軽くなると一人でも病院に行けるようになります。
地道な薬物治療、本人の勇気やがんばり、周りの理解などの協力で外出できるようになります。あきらめずに病気に打ち勝ちましょう。
なかまの会が主催する行動療法会に参加することで、少しでも広場恐怖の症状が緩和されればと思っております。
また社交不安症の方の対人緊張を克服する場としてもチャレンジしていただければと思います。
他にも 認知行動療法、自立訓練法などが効果的
一足飛びに良くなることはないので、一歩一歩進めていくほうが長い目で見ると完治する人が多いようです。
パニック発作を起こさないコツ・・
発作にふりまわされている人ほどパニック発作を起こしやすい。
発作を起したときは、「これはパニック発作 すぐに治まる 死ぬことはない 大丈夫」と自分に言い聞かせること。
また「疲れを溜めない」「適度な運動をする」ことも大切です。
どうしても不安や緊張が取れないときは、同じ辛さを経験している、なかまの会の会員さんなどに
話を聴いてもらうことも有効かもしれません。
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