パニック障害はこんな病気
パニック障害は、以前は心臓神経症や不安神経症と呼ば れていました。昔からある病気ですが、パニック障害という病名で認知されるようになったのは、つい最近のことです。1980年に、米国精神医学会が出した 「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)ではじめて登場し、92年にWHO(世界保健機関)の国際疾病分類にパニック障害として登録されたこと から、この病名に統一されました。DSMの分類で分かるように、パニック障害は不安障害の一つです。不安障害でいう不安とは、外的対象のない漠然とわきあがってくるものです。世界各地で行われた疾学調査によると、生涯有病率(一生涯のうち発症する確率)は国によってばらつきは有るものの、およそ 1.5~3%となっています。このようにパニック障害は比較的ポピュラーな病気で、アメリカではPanic disorder(略してPD)の名前で知られます。発作は一度ではなく何回か繰り返されますが、その頻度、強度はさまざまです。週に一回ぐらい中程度の発作が起こることもあれば強い発作が起きて、 その後は何ヶ月もあくということもあります。
予期不安:
パニック発作が起きると、大半の人は救急外来、もしく は内科を受診しますが、その頃には発作はすっかり治まっていますし身体的な異常はないので、はっきりした診断がつかないことがほとんどです。そのために、 不安は解消されず、パニック発作を防ぐこともできません。何回か発作を繰り返すと、いつどこで起きるか予測できないこともあり、「また起きたらどうしよ う」と不安でたまらなくなります。これが予期不安です。このように、パニック障害では、パニック発作に続いて予期不安が起こるのが特徴です。
広場恐怖:
予期不安が高じると、発作を起こした場所や状況を避けるようになります。たとえば、エレベーターの中で発作が起きた人は、エレベーターに乗れなくなりますし、家に一人で居るときに起きた人は、一人で居るのが怖くなります。これが広場恐怖で、発作が起きたときにすぐに逃げ出せない、あるいは助けを求められない場所や状況などを回避するようになるものです。パニック障害では、少なくとも三分の一~二分の一の患者に広場恐怖が伴うといわれていますが、必ず併発するわけではありません。回避行動が見られない患者さんもいます。
パニック障害克服
パニック障害は治るの?
抗不安薬と抗うつ薬が良く効きます。
まず、薬でパニック発作が起こらないようにし、また予期不安や身体に対する不安を取り除くことが大切です。不安があると、不安と関連してからだの症状が悪 くなり、また気持ちも前向きになれません。クスリ、特に精神科の薬はクセになるとか、ボケるとかいって怖がる方も多くいますが内科や外科などで使われる薬に比べて、危険と言うことは全くありません。血圧の高い人が血圧を下げる薬を飲むのと同じ事です。
心配なところがあれば、よく主治医と相談してください。
少し薬に副作用など悪い面があったとしても、薬を飲むことにより発作が無くなり、外出も平気で出来るようになり、日々の生活がなるべく発病前の様になるとしたら、その方が良いに違いありません。発作自体が無くなってきても、なかなか乗り物に乗ったり、外出したりする事の恐怖感が取れない人がいます。薬を飲んでいても心配でしかたない。その様なときには(少しでも理解のある)家族や友人に頼んで外出に付き合ってもらって下さい。
そして、勇気と薬(頓服など)を持って外出してみて下さい。
(行動療法)ゆっくりと、決して焦ったり無理することは禁物です。慣れてきたら少しずつ冒険をしてみることです。各駅停車にしか乗れない人は急行に挑戦してみるとか遠出する距離を伸ばすとか、スーパーや買い物などにいる時間を延ばしていくとか。
(認知行動療法)症状自体はゼロにはならないかも知れませんが、自信が付いてきます。また、良くなったと喜んでいても、また再発する事も無いとは言えません。症状を無くす事ばかりにとらわれず、うまく付き合う、症状も自分の一部として考えられるようになると逆に病気も良くなるようです。それには、やはり時間がかかります。パニック障害は気長に焦らず怠らずゆっくりと治していくことが大事だと思います。
資料協力・大阪府済生会中津病院 精神神経科
参考文献 「パニック障害の治し方が分かる本」
(主婦と生活社) 2003年発刊